国立大学法人 筑波大学
大学院システム情報工学研究科
構造エネルギー工学専攻
笠原研究室 (Kasahara Lab.)

パルスデトネーションロケット(PDR)の研究 (筑波大学−JAXA/IAT−IHIエアロスペース共同研究)

本研究では、世界初のパルスデトネーションロケットエンジン(PDRE)による飛行実証に向けて、研究を行っています。本研究では、これまでにPDREシステムの性能を予測するPDREシステムモデルの構築およびPDREシステム実証機「TODOROKI」の製作を行いました。2006年7月28日には、筑波大学内において「TODOROKI」の滑走試験が実施されました。滑走試験結果から、構築されたPDREシステムモデルでPDRシステムの性能予測が可能であることを実証しました。滑走試験における作動周波数は6.667Hz、平均推力34.95Nでした。

入口流体駆動バルブに関する研究

現在、本研究ではPDREに特化したバルブ機構の開発を行っています。PDEは構造が単純なため、PDE性能はバルブ機構の性能に大きく依存します。特にPDEを推進器として応用する場合、バルブ単位質量当りの質量流量が大きいことが要求されます。しかしながら、ロータリーバルブや電磁バルブに代表される既存のバルブシステムでは、その構造上、それぞれのバルブの課題を解決することは非常に困難です。また、デトネーション波生成によって発生する高エンタルピーガスを利用して、推進剤の供給を一時的に停止するバルブシステム(バルブレスシステム)は作動可能領域が狭い、推力損失が大きいなどの課題も多く残されています。本研究では、これらの問題を解決するべく、既存のバルブシステムとは全く異なる作動原理で駆動し、駆動源や制御装置等が必要なくとも間欠流を生成することが出来るバルブ(入口流体駆動バルブ)を考案しました。このバルブは、バルブ上流側のガスエンタルピーをピストンの運動エネルギーに変換することでピストンを駆動し、ピストンによって流路を遮断するため、駆動源や制御装置等が必要なく、また作動範囲は上流側のガスエンタルピーに依存するため、広い圧力領域で作動可能です。
H20年2月に行った世界初の入口流体バルブ型PDEシステムでの連続燃焼試験では、作動時間1秒において作動周波数9.85Hzを得ました(動画)。現在は、作動時間を延ばし、推力測定実験を行っています。今後、このバルブを用いたPDRE打ち上げ試験を行う予定です。 実験の動画