国立大学法人 筑波大学
大学院システム情報工学研究科
構造エネルギー工学専攻
笠原研究室 (Kasahara Lab.)

パルスデトネーションロケット(PDR)地上燃焼試験報告
実施日 2004年3月17日 実施場所 筑波大学虹の広場

パルスデトネーションロケット

近年、パルスデトネーションエンジン(PDE)と呼ばれる、 エンジンが、日欧米で盛んに研究されています。 デトネーション波とよばれる極超音速で伝播する燃焼波を利用することにより、極めて単純な構造で力積や仕事をとりだす ことができるエンジンです。ガスタービンエンジンの燃焼機に適用すると エンジンの熱効率を格段に向上させることができます。 日本ではガスタービンエンジン、欧米では空気吸い込み式ジェットエンジンを 当面の開発目標と設定しています。
本研究チームは、どちらのエンジンに展開してもその基幹部分において、 利用できるロケットシステムを研究対象とし、約1年半の開発研究を行って きました。2004年3月17日に、ロケット飛行試験機が完成し、 筑波大学内での公開燃焼試験にこぎつけました。

なお、パルスデトネーションロケットのシステム試験は世界初です。

このプロジェクトは、 平成14−15年度経済産業省地域新生コンソーシアムプロジェクトとして行われて います。プロジェクトを統括管理するのは、北海道TLO(株)です。 また、平成12-14年度NEDO産業技術研究助成事業成果をベースとしています。
大学と企業の産学連携プロジェクトであり、 大学側は、筑波大学、慶應義塾大学、広島大学、室蘭工業大学 北海道工業大学、北海道大学、小樽商科大学から組織されています。 企業側は、IHIエアロスペース(IA)、IHIエアロスペースエンジニアリング(ISE) 先端技術研究所、エア・ウオーター、ハイパーソニックラボから組織されています。 試験当日は、上記のコンソーシアムメンバーに加えて、PDEを研究されている方々、 PDEに関心をもたれている方々をお招きしました。多忙の中、かけつけて 頂いた方ばかりで、また長い時間を拘束してしまいました。お詫びと感謝を申し あげます。
このプロジェクトには、若い勇気あるグループも加わっております。大学宇宙コ ンソーシアム(UNISEC)筑波大学グループです。彼らは自力でCANSAT(超小 型人工衛星のプロトタイプ)を製作し、このロケットに装着、加速度測定をこなしました。

実験の様子

ロケットの組み上げ

ロケットの組み上げ風景です。
最上部には、エチレン、酸素、へリウムを間欠的に 供給するための電磁バルブが装着されています。
胴体まわりの電子装置によって、 バルブと点火器の制御・電力供給を行います。

ランチャー

ボンベ以外を組み上げたところで、ランチャーにとりつけます。ロケットの重量は約 30kgです。茶色のL型鋼が長さ4mのランチャーで、発射角度は45度に設定され ています。4人がかりで作業は行われました。最後にボンベが取り付けられて組み 立ては完了となります。

最終動作チェック

バルブと点火器の最終動作チェックが行われております。発射ボタンは、ロケット本 体から約50m離れた場所である実験本部に設置されています。実験本部とトラン シーバーでやりとりしながら、動作確認が行われました。

パルスデトネーションロケット

実験本部から見たロケット(右奥)です。推力計測の他に、騒音計による音圧測定 も行いました。

CANSAT

灰色のボンベ(エチレン)の底部に装着されているのが、UNISEC筑波大グループの 製作したCANSATです。

 
室内燃焼試験

屋外推力試験の2日前に撮影された、室内燃焼試験の映像です。(13.0M) この実験では10Hzで3回の連続作動が行われました。予定推力を獲得していることを 確認しました。 本試験の映像(高速度カメラによる)です。(5.21M)現在、正確な推力・比インパルス値を解析中です。 3サイクル連続作動に成功し、実験は無事終了しました。