推進エネルギーシステム工学研究グループ

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推進エネルギーシステム研究

旧笠原研究室(筑波大学)HP

デトネーションエンジンの飛行実証研究

本研究では、デトネーションエンジンの飛行実証試験によって、実飛行環境下(6自由度下)におけるデトネーションエンジンの飛行特性・推力性能評価を行っています。本研究室が開発した射出・回収機構は、30kg程度の飛行体を垂直に10m/s程度で射出、ワイヤー回収が可能であり、飛行体の損傷なく1-2秒程度の6自由度環境を再現可能です。2013年10月20日、名古屋大学においてPDREシステム実証機「TODOROKI II」の水平飛行試験に成功しました。
名古屋大学プレスリリース

飛行中の「TODOROKI II」 飛行試験後の集合写真

飛行中の「TODOROKI II」

飛行試験後の集合写真

2013年11月30日、筑波大学においてシステム実証機「TODOROKI II」の垂直飛行試験に成功しました。飛行試験では、実飛行環境下において約1.2秒の安定したPDRE作動および平均推力254 Nを達成しました。本飛行試験によって、世界で初めて6自由度下におけるPDR作動を実証しました。
(名古屋大学-筑波大学-慶応義塾大学-JAXA/ISAS-広島大学-横浜国立大学-ISE-NETS共同研究)

 
飛行中の「TODOROKI II」 飛行試験後の集合写真 中日新聞記事

飛行中の「TODOROKI II」

飛行試験後の集合写真

中日新聞記事

回転デトネーションエンジン(RDE)の研究

近年、PDE以上の単純構造・大推力が可能なデトネーションエンジンとして回転デトネーションエンジン(RDE)の研究がアメリカ・ヨーロッパ、ロシア、中国、日本で精力的に研究が行われています。将来、既存のガスタービンエンジンやロケットエンジンに変わるエンジンとして期待されています。しかしながら、その作動原理、安定作動条件、推力性能等不明な点が多く存在します。本研究室では、RDE燃焼機内の流れ場を可視化し、その作動および推力の生成メカニズムの解明を行っています。また、RDEの理論性能計算及び500N級RDE推力試験の相互比較によってRDE推力性能評価を行っています。

   
可視化用RDE 500 N級RDE

可視化用RDE

500 N級RDE

パルスデトネーションロケットエンジン(PDRE)の研究

2006年7月28日、筑波大学構内においてシステム実証機「TODOROKI」の滑走試験が実施されました。試験では、作動周波数6.667 Hz、最大推力42.06 N、平均推力34.95 Nを達成しました(動画有り)。(筑波大学-JAXA/IAT-IHI Aerospace共同研究)
現在、「TODOROKI」のPDREシステム実証および「TODOROKI II」の飛行実証研究の成果を反映し、6自由度下における姿勢制御実験を実施しています。本実験によってスラスタ性能(最小ONタイム、ミニマムインパルスビット、推力重量比など)を評価し、既存スラスタとの性能比較を行っています。将来的には、宇宙機・ランダー用高性能姿勢制御用スラスタとしてのパルスデトネーションロケットエンジン実用化を目指しています。
※FirefoxとChromeで動画を再生する場合、Windows Media Playerプラグインをインストールする必要が有ります。

システム実証機「TODOROKI」

システム実証機「TODOROKI」

滑走試験動画

燃料液滴パージ法を用いたパルスデトネーション燃焼器の高周波数・長時間作動化

PDE実用化には多くの高い技術課題があります。例えば、広範囲での作動周波数制御による出力変更、長時間作動(高信頼性)、システム単純化による簡易操作が挙げられます。本研究では、残留既燃ガス中へ液体燃料(もしくは液体酸化剤)を噴霧することで、パージ・燃料充填・燃焼器内部直接冷却を同時に実現する「燃料液滴パージ法」の研究を行っています。燃料噴霧に自動車用インジェクタを用いることで、高周波数作動と長時間作動を同時に実現することが可能です。液滴の微粒化・相転移と爆発的な燃焼との相互作用を理解し、燃料液滴パージ法によるPDC実用化を目指しています。

   
実証燃焼器(燃焼器全長 300 mm, 内径 10mm) 燃料液滴パージ法(バルブレスPDC)のサイクル図

実証燃焼器(燃焼器全長 300 mm, 内径 10mm)

燃料液滴パージ法(バルブレスPDC)のサイクル図

入口流体駆動バルブに関する研究


燃焼実験動画

PDEは構造が単純さ故、その性能はバルブ機構の性能に大きく依存します。特にPDEを推進器として応用する場合、バルブ単位質量当りの質量流量が大きいことが要求されます。しかしながら、ロータリーバルブや電磁バルブに代表される既存のバルブシステムでは、その構造上、それぞれのバルブの課題を解決することは非常に困難です。また、デトネーション波生成によって発生する高エンタルピーガスを利用して、推進剤の供給を一時的に停止するバルブシステム(バルブレスシステム)は作動可能領域が狭い、推力損失が大きいなどの課題も多く残されています。本研究では、これらの問題を解決するべく、既存のバルブシステムとは全く異なる作動原理で駆動し、駆動源や制御装置等が必要なくとも間欠流を生成することが出来るバルブ(入口流体駆動バルブ)を開発しました。このバルブは、バルブ上流側のガスエンタルピーをピストンの運動エネルギーに変換することでピストンを駆動し、ピストンによって流路を遮断するため、駆動源や制御装置等が必要なく、また作動範囲は上流側のガスエンタルピーに依存するため、広い圧力領域で作動可能です。本コンセプトをベースにTODOROKI IIの入口流体駆動型回転バルブが開発されました。
H20年2月に行った世界初の入口流体バルブ型PDEシステムでの連続燃焼試験では、作動時間1秒において作動周波数9.85Hzを得ました(動画有り)
※FirefoxとChromeで動画を再生する場合、Windows Media Playerプラグインをインストールする必要が有ります。

パルスデトネーションタービンエンジン(PDTE)の研究

パルスデトネーションエンジン(PDE)で発生した燃焼ガスをタービンに供給する、パルスデトネーションタービンエンジン(PDTE)に関する研究です。デトネーション波の特徴である間欠流がタービンの回転に与える影響を調べるために、不活性ガスで間欠流を発生させる装置、間欠作動衝撃波管を開発しました。この装置を用いて、間欠流とタービンとの相互作用を調査しています。図は間欠作動衝撃波管とターボチャージャーの写真です。パルスデトネーションタービン

デトネーション管内の熱伝達の研究

パルスデトネーションエンジン(PDE)の利点の一つとして構造の単純さが挙げられます.PDEは極めて細長い円管でも推力を発生させることができます.その様な管は構造の単純さから形状を任意に変えることができるため,燃焼器としての本来の役割に加えて他の機能を持たせることも可能です.しかし,管長が長くなるとデトネーション波後方で発生する熱伝達と摩擦が大きくなり,結果的に推力損失が発生します.本研究では,実験装置や実験方法を工夫することでそのような推力損失の高精度な定量的評価を行い,数値解析結果と比較することで,デトネーション波後方での熱伝達と摩擦のメカニズムを解明していくことを目的にしています.デトネーション管内の熱伝達の研究

真空下でのパルスデトネーションエンジンの性能

パルスデトネーションエンジンは燃料を部分充填することで推力が増大することが可能です。この効果は前提として大気圧下でなければなりません。なぜなら、部分充填したガス前方にある管内大気を押すことで推力増大するからです。この部分充填効果が真空中において存在するかどうか、また存在するとすればどの程度の効果があるのかをデトネーション現象を模擬することで検証します。実験はワイヤーで吊るした衝撃波管にガスを高圧充填して、瞬時に排気することで推力を測定しました。作動ガスにはヘリウム、アルゴン、窒素、水素、六フッ化硫黄を用いました。以下は実際に衝撃波管を真空チャンバー内に吊るした写真になります。真空下でのパルスデトネーションエンジンの性能

デトネーション駆動衝撃波

笠原研究室では基礎研究としてデトネーション駆動衝撃波と斜めデトネーション波の研究をしています.<デトネーション駆動衝撃波>デトネーション駆動衝撃波とはパルスデトネーションエンジン(PDE)作動時に副次的に生成される衝撃波です.デトネーション駆動衝撃波とは,パルスデトネーションエンジン内の可燃性気体中を超音速で伝播するデトネーション波が,外部に出る際に周囲気体(例えば大気)をピストンのように圧縮することによって生成される衝撃波です.一般的に衝撃波は,爆発物の爆発の際にその周囲に生じますが,デトネーション波を高周波で生成することが可能なPDEは,衝撃波を高周波で容易に生成することが可能です.そこでデトネーション駆動衝撃波を積極的に利用していくためには,さまざまな特性を明らかにする必要があります.現在は,衝撃波の光学可視化観測や静圧観測を行い,その伝播特性や現象の基礎的な知見を研究しています.こういったことと同時に,PDEの技術を他分野にどのように利用していくかを模索しながらのテクノロジーアウト型の研究です.デトネーション駆動衝撃波

斜めデトネーション波

可燃性気体中を超音速で伝播するデトネーション波は非常に強力な燃焼波であることが知られていますが,このデトネーション波のうち弓状衝撃波による圧縮を用いた場合,斜めデトネーション波が形成されます.斜めデトネーション波は推進機構への応用が特に期待されており,現在挙げられている応用例としては斜めデトネーションエンジンやラムアクセレーターがあります.しかしながら,斜めデトネーション波は基礎的な研究が不足しており,これら推進機構の実現にあたっては斜めデトネーション波における衝撃波と燃焼領域の状態やそれらの相互作用についてのさらなる知見を得ることが不可欠です.現在は,バリスティックレンジ(二段式軽ガス銃)および光学的可視化法を用いて,直接的かつ実験的な調査を行っています.斜めデトネーション波

更新情報

ワルシャワ工科大学(Warsaw University of Technology)のPiotr Wolanski先生が2016年5月29日から6月1日まで本研究室に訪学され、航空宇宙機用回転デトネーションエンジン(極超音速燃焼器)に関して共同研究・講演等を行っていただきました。5/30の講演会では「ポーランドにおける回転デトネーションエンジンの開発に関して(Development of RDE in Poland)」という題目で、今日までワルシャワで実施されてきた回転デトネーション燃焼器を始めとした航空宇宙機用エンジンの実験研究を紹介していただき、回転デトネーション燃焼器をGTD-350ガスタービン(ターボシャフト)エンジンに組み込んだ最新の実験結果を紹介していただきました。今後も本研究室とは、研究に関する情報交換を行います。

講演会のご案内 名古屋大学での講演の様子1 名古屋大学での講演の様子2

講演会のご案内

名古屋大学での講演の様子1

名古屋大学での講演の様子2

  
名古屋大学での講演の様子3 共同研究会議の様子 懇親会での集合写真

名古屋大学での講演の様子3

共同研究会議の様子

懇親会での集合写真

カルフォルニア工科大学(Caltech)のC. K. "Kelly" Johnson Professor of Aeronautics and Professor of Mechanical EngineeringのJoseph E. Shepherd先生が、日本学術振興会の招へい研究員として本研究室に2015年8月6日から9月6日まで32日間滞在されました。 滞在期間中、デトネーション、デトネーションの推進応用、極超音速流れ、爆発安全等などに関して、共同研究・講義等を行っていただきました。9月5日には、デトネーション研究会主催の第10回デトネーション若手夏の学校で特別講演を行って頂きました。Shepherd先生は帰国後Caltechの副総長に就任予定であり、今後も本研究室とは、研究教育に関する情報交換をおこないます。

 
名古屋大学での講演の様子1 名古屋大学での講演の様子2

名古屋大学での講演の様子1

名古屋大学での講演の様子2

 
夏の学校での講演の様子1 夏の学校での講演の様子2

夏の学校での講演の様子1

夏の学校での講演の様子2

 
夏の学校 BBQでの集合写真 夏の学校 BBQ乾杯の挨拶

夏の学校 BBQでの集合写真

夏の学校 BBQ乾杯の挨拶

2015年3月4日に、名古屋大学にて「第1回次世代航空宇宙推進工学研究会 極超音速燃焼デトネーションの航空宇宙推進機への応用シンポジウム」が開催され、大学・企業・研究所から40名近い参加がありました。本シンポジウムは、今求められている航空宇宙用推進機について「consider together!」をテーマに開催されました。既存推進器の課題・デトネーションエンジン・電気推進エンジン・宇宙探査プロジェクト等に関する最新の動向についての発表があり、活発なディスカッションが行われました。既存技術を一新するための超えなくてはならない高い壁を痛感したと同時に、今後の研究の モチベーションになる貴重な経験ができました。

 
参加者全員での集合写真 ディスカッション

参加者全員での集合写真

ディスカッション

平成27年3月4日(水)に名古屋大学にて「極超音速燃焼デトネーションの航空宇宙推進機への応用シンポジウム」が開催されます。現在、新しい航空宇宙推進機であるデトネーションエンジンの研究が世界中で活発に行われています。本シンポジウムでは、名古屋大学や国内の各機関で行われているデトネーションエンジンの研究と世界の研究動向を紹介し、極超音速燃焼デトネーションの航空宇宙推進への応用に関して議論します。入場無料・申し込み不要ですので、是非ご参加ください(ポスターをクリックすると拡大でき、詳細なプログラムがご覧いただけます)。

 
ポスター プログラム

ポスター

プログラム

平成26年9月5~7日の2泊3日の日程で,京都府の関西セミナーハウスにて「デトネーション研究会若手夏の学校」が開催され,100名近い参加者がありました.本年度は,本研究室の石原一輝君(B4)が遠藤先生の論文「Pressure History at the Thrust Wall of a Simplified Pulse Detonation Engine」の解説を行い,デトネーション研究会からヤングレクチャー賞を受賞しました.講義だけでなく,夜には他大学・企業・社会人OBの方との交流を通して,横のつながりを作ることができ大変有意義な3日間でした.

 
レクチャー賞を受賞した石原君 参加者全員での集合写真

レクチャー賞を受賞した石原君

参加者全員での集合写真

AIAA 主催のPropulsion and Energy 2014に参加し,M1の高木君と加藤君が研究成果を発表しました.
本研究室の加藤優一君(M1)と高木駿介君(M1)が,2014年7月28日~30日にクリーブランド(オハイオ州,アメリカ)で開催されたAIAA Propulsion and Energy 2014にて発表を行いました。加藤君は「Thrust Measurement of Rotating Detonation Engine by Sled Test」、高木君は「Study on Pulse Detonation Rocket Engine Using Flight Test Demonstrator "Todoroki II"」のタイトルでそれぞれ発表を行いました.

 
発表中の高木君(一番右) 発表後の高木君(左)と加藤君

発表中の高木君(一番右)

発表後の高木君(左)と加藤君